「AI」の是非で盛り上がる時、議論の核心は「ヒト」自身が抱える本質的な問題に、ブーメランのように跳ね返ってきます。メディアがAIをネタにする時、内容が深堀された記事ほど、ある共通点が浮かんでくるのです。【↓後半へ続く】
AI上司/AI Boss 目次(5章~6章)
【↑前半から続く】つまり、人間特有の「二面性」や「冗長性」が原因で、ヒトに対して抱えている恒常的な不満が、裏返しとなって「AIの問題」のように論じられているのです。
最近「AI上司」を支持する向きも多いようですが、AIを積極的に評価してのことではないでしょう。
むしろ、ヒトがヒトを管理する不条理さや、「忖度」「裏読み」「根回し」に感じてきた違和感から、「だったらAIの方が…」と現実逃避と消去法で「票」を集めているのです。
現時点でAIは、自分の「意思」を持ち、物事の「意味」を理解し「判断」しているわけではありません。あくまで意思を持ったように振る舞っているだけです。
また顔認証技術のように、ヒトの持つ「暗黙知」さえも自由に操っているように見えますが、「形式知化」した膨大なアルゴリズムを、圧倒的な演算能力で処理しているにすぎません。
とはいえ、過去を凌駕する処理能力を持った今、AIが実用レベルに到達してきたことは間違いありません。私たちが、ヒトの持ち味である「曖昧さ」や「不確実性」をネガティブに捉え、現実逃避や不満の裏返しとしてAIを頼るなら、彼らはそれに十分応え得るでしょう。
逆説的に考えるなら、AIが自らの「意思」を持っていないことで、かえってヒトは安心し、素直にAIを頼ることができる、という構図も見えてきます。
AI Bossシリーズは、「ヒト」と「AI」が互いの妥協点を模索しながら、共存の道を探っていく過程を切り取っています。
AIをネタに騒ぐのではなく、切り取った1コマに透けて見える問題の本質をリアルに感じ、ヒトにとって心地良い未来なのか検証してみました。上司がAIになる日、Society5.0の社会です。
AI上司/AI Boss 目次(1章~4章)
第1章 報連相 編
ヒトを上回る圧倒的な知識量を誇るAIを前に、私たちがとるスタンスは?
ついていけるのか?
そもそも、ついていこうと思うのか?