AIが上司になる日

【AIマンガ】プレゼン④リスクヘッジ(遠慮は文化編)/AI上司/AI Boss21

AIと共存する社会Society 5.0。せっかくチャンスがやって来ても、素直に行動できないのがヒトの悲しい性(さが)。内心オファーを受けたいのに「役不足」と謙遜したり、人目を気にして遠慮した経験は誰にでもあるでしょう。

ところで、遠慮や謙遜で断っているのか、それとも本当に嫌なのか。相手の真意を見分ける為には、「お約束」のやり取りが何回か必要になってきます。

ヒト特有の「お約束」文化。果たしてAIには理解できるでしょうか?AI Bossシリーズ第21弾。

1、リスクヘッジ/ 遠慮は文化編




2、AIは便利な存在

①卓越した隠れ蓑(みの)

「これだからAIは!」相変わらず、論点がすり替えられています。

AIについて語るとき、ともすると彼らに「意志」や「個性」があるかのように話を進めがちです。その方が、AIに「責任を転嫁できる」との思いが働くのでしょう。

「AI部長ときたら、遠慮や謙遜の文化がわかってない!」と嘆いていますが、このセリフを理屈っぽく表現し直すと
→「ヒトがアルゴリズムを設計した際、AI部長が、遠慮や謙遜を考慮するようプログラムしていない」が正しいでしょう。

AIは、自分の「意思」を持ち、物事の「意味」を理解し「判断」しているわけではありません。あくまで意思を持ったように「振る舞って」いるだけです。

つまり、卓越した能力がありながら「意思」を持たない便利な存在「AI」を隠れ蓑にして、「ヒト」を巧みにコントロールしようとするのは、同じく「ヒト」である、ということです。

物事の裏に、ヒトの「したたかさ」や「あざとさ」が透けて見えるのは、いつの時代も同じ。AI時代になっても、手口が一層巧妙になるだけで、本質は同じかもしれません。

②セリフの「その先」を考える

先程のセリフを更に穿って考えると、「その先」に次のような文脈が浮かんできます。

【第一段階】AI部長には、遠慮や謙遜の文化がわからない!
  ↓
【第二段階】ヒトがアルゴリズムを作る際、AI部長が、遠慮や謙遜を考慮するようプログラムしていない
  ↓
【第三段階】ヒトがアルゴリズムを作る際、AI部長が、状況に応じて
① 遠慮や謙遜を考慮して高度に判断
② 遠慮や謙遜など知らない風を装いスルーして判断

つまり、両パターンを巧みに「使い分け」出来るようプログラムしておけば、設計サイドに都合良く導くことも可能です。逆に、周到で緻密な意図が隠されていても、見破るのは極めて難しいでしょう。

3、認識AIと生成AI/どちらも任せる危機感

①暗黙知と深層学習

これまでAIは、顔認証技術のように、物事を「認識」したり「予測」する能力をメインに活躍してきました(認識系AI)

ところが最近、多様なデータを自ら作成する「生成系AI」なる技術が、注目を集めています。(GAN※)

ヒトには、理屈でなく無意識に出来てしまう能力「暗黙知」が備わっています。

例えば、髪型を変えたパートナーや、成長した子供の顔でも、簡単に見分ける事ができますね。理屈で説明できない知識、それが「暗黙知」です。(たまに、パートナーの「髪型の変化」に気がつかず、大惨事になることはありますが)

AIの深層学習(ディープラーニング)とは、「暗黙知」を膨大な「形式知」に置き換え、圧倒的な演算パワーで学習させる技術です。

現在、実用に耐え得るレベルまで向上し、あたかもヒトの「暗黙知」をキャプチャーしたかのように振舞っています。

②GAN(Generative Adversarial Network)

ところが、AIに学習させるには、膨大な正解データ(教師データ)を人の手で用意する必要がありました。

この作業を大幅に簡略化できる技術が、GAN(Generative Adversarial Network/敵対的生成ネットワーク)※と呼ばれ、最近注目を集めています。

既存画像から、様々な亜種画像を作成できるニューラルネットワークで、このアーキテクチャを使えば、正解データをヒトが用意しなくても、勝手に学習してくれる。

このため、産業界でも、今後様々な活用が期待されています。

③教師役を放棄した人類に残るもの

技術論より、むしろ気になる事は、データを生み出す「生成側」も、それを判別する「認識側」も、両方「AIまかせ」になる点です。

遠慮の事例で考えた切り口は、あくまでAIが「認識し判断する側」を担う場合。

「データを生み出す側」さえAIが担うフェーズに入るなら、何が「遠慮」で何が「フェーク」か、冗談なのか本気なのか。ヒトは何を根拠にどうやって判断するのでしょう?

人類は、一握りの階層以外「ユースレスクラス(無用者階級)※」になる、との厳しい警告も聞こえてきます。
※ユヴァル・ノア・ハラリ氏/朝日新聞(2019年9月8日)より

教師役を放棄した大部分の人類に、今後、真偽を見分ける「術」と「能力」が残っていくのか、甚だ疑問です。

4、まとめ

・AIは、卓越した能力がありながら「意思」を持たない便利な存在
・ヒトはAIを隠れ蓑に使い、大衆をコントロールすることも可能

・ヒトがAIのアルゴリズムを作る際、AIが状況に応じ

 ①遠慮や謙遜も考慮して高度に判断
 ②遠慮や謙遜など知らない風を装いスルーして判断
 を両方使い分け、都合良い結論に導くことも可能

・従来の「認識系AI」に加え、GANをはじめとする「生成系AI」の台頭は、データを「生み出す側」もそれを「判別する側」も、両方「AI任せ」になることを意味する。今後、ヒトの「審美眼」や「能力」の低下が懸念される

GAN(Generative Adversarial Network/敵対的生成ネットワーク)
Ian Goodfellow 氏が2014年に発表したアーキテクチャ。2つのニューラルネットワークを競わせて学習させる。

「Generative Adversarial Network とは――トップ研究者が解説」
(NVIDIA BLOGより)
https://blogs.nvidia.co.jp/2017/06/21/generative-adversarial-network/

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