AIと共存する社会 Society5.0。政府機関や企業をハッキングし、機密情報にアタックする行為は、今や日常的に起きています。
そんな中、ブラックハッカーに対抗し、情報を守るのがホワイトハッカー。まさに現代の救世主ですが、技術者の養成には手間とコストが掛かります。
今回、いち早くハッキングを探知したAI部長は、自ら「ホワイトハッカー」となり、会社のために防戦します。頼もしい限りですが、これに彼のリソースを集中させたため、思わぬ事態が発覚します。AI Bossシリーズ第23弾。
目次
1、消えた部長/ホワイトハッカー編
2、倫理観・宗教観が試される
①急激な技術革新の功罪
2D映像分野では、人間そっくりにつくられたCGが「リアル過ぎる」と話題を集めています。(例:NEON※)
これを更に進めたのが「3Dホログラム」。いよいよ3次元空間に投影される映像技術の話です。ただ、今のところまだ発展途上ですね。
しかし、3Dだけにクオリティーが上がり過ぎるのも困り物。本物と見分けがつかなくなった時点で、倫理的に難しい問題をはらんできます。
いつの時代も、急激な技術革新は、人間の生活レベルを向上させると同時に、ヒトの倫理観や宗教観を試すべく、様々な問題を突き付けてきました。
完璧な3D映像も然り。そこに「居る」ように見えるのに、実態はそこに無い。
②疑心暗鬼に火をつける
今回のケースでは、社員は皆「AI部長&コーヒーカップ」がテーブル上に存在する前提で話しかけていました。
それが「偽映像」とわかった今、みな一様に動揺を隠せません。どこか騙されたようで釈然としない。
「いったい、何時から入れ替わったのか。そもそも、始めからそこに居なかったのか?」
まあ、こんなことされたら、疑心暗鬼にもなるでしょうね。
3、スカイウォーカーとAIの存在定義
①スカイウォーカーの「存在」
映画「スター・ウォーズ」シリーズ8作目「最後のジェダイ」には、伝説のジェダイ「ルーク・スカイウォーカー」が突如戦場に現れ、一同を驚かせるシーンが登場します。
その後壮絶なバトルが始まりますが、ルーク自身は、遠い星から懸命に念(フォース)を飛ばしている、という設定です。
この場合、ルークは人間ですから、どちらが「本物」でどこに「存在」しているか、視聴者が迷うことはありません。
②AI上司の「存在」
ところが職場の「AI上司」は、あくまで入出力用の「端末」。アルゴリズムはクラウド上で稼働しています。
とは言え、端末でしかないその物体と、社員は日々会話をし、報告したり指示を受けたりしています。さあ、「存在」の定義が一気に曖昧になってきました。
【どれが上司?/AIの存在定義】
① 会話している目の前の「端末」
② アルゴリズムが稼働するクラウド上の「チップ」
③ システム全体(クラウド+複数の端末すべて)
ネットワーク上を自由に往来できるAI部長は、何をもってその存在を定義するのか。そもそもAIの存在を「定義すること」自体に意味があるのか。悩みは尽きません。
本社や支店に多数配備された「AI部長」端末の全てが、クラウド上で同期し「同一人格」を形成した時点で、有史以来の「存在」の概念が大きく変わります。
4、まとめ
・急激な技術革新は、人間の生活レベルを向上させると同時に、倫理観や宗教観を試す様々な問題を突き付ける
・3Dホログラムのクオリティが上がり過ぎ、本物と見分けがつないことで倫理的な問題をはらむ
・AI上司がどこに居るのか「存在」の定義は困難
(①目の前の端末、②クラウド上のチップ、③システム全体)
・複数ある「AI部長」端末が、クラウド上で同期し「同一人格」を形成した時点で、「存在」の概念は大きく変化する
※NEON
サムスンの技術研究部門 Samsung Technology and Advanced Research Labs(STAR Labs)に関連する企業「NEON」が、CES 2020(アメリカネバダ州ラスベガス/2020年1月)に出展・発表した人間そっくりの外観を持つ「artificial human」。「A New Kind of Life」と表現されている。