AIが上司になる日

【AIマンガ】人事①AI部長のアドバイス(兼務編)/AI上司/AI Boss13

AIと共存する社会 Society5.0。社員を悩ます「兼務」発令。本務の他に職務を兼ねることですが、始めはシンプルだった名刺も、気がつくと「兼務の肩書」がどんどん増えていきます。多すぎて感覚がマヒする人も。

それでも、何とか職責を果たそうとヒトは奮闘しますが、結局「からだがもう一つあればいいのに!」と悩みを抱えて働いています。

人財不足が叫ばれて久しい時代。もはやヒトに抜本的な解決は無理なんでしょうか?そんな時、AI部長が何気なくつぶやきます。果たしてこれは冗談か? AI Bossシリーズ第13弾。

1、AI部長のアドバイス/兼務編




2、兼務の常態化は解決不能?

兼務の常態化は、今に始まったことではありません。平成の後半から、特に「人財不足」が叫ばれていますが、令和になっても状況は同じです。

また、「働き方改革」が浸透する一方、企業を揺るがす「不祥事」も続いています。社内には、過去に遡って解決すべき問題が山積し、この処理は暫定組織(PTやWGなど)に託されていくのです。

暫定組織の多くは「兼務」社員で構成されるため、兼務の乱発が常態化する一因にもなっています。管理職なら、なおさらでしょう。

職責が上がるたびに「兼務」の数が増えるのは、目先の利益に繋がらない問題が次々と発覚し、その都度「後追い」で対応せざるを得ない「苦しいピッチング」が続いている証拠とも言えます。

兼務が増えたのは、良く解釈すれば期待のあらわれ。が、そんな風にポジティブに捉える社員は少数派でしょう。この問題、結局「ヒト」には抜本的な解決は無理なんでしょうか?

3、AIワーカーの威力

①電脳化に伴う高いハードル

「攻殻機動隊シリーズ」(原作:士郎正宗氏、1989年『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』)は、ヒトのニューロン(脳の神経細胞)と外部ネットワークを直接接続できる「電脳」が普及する、近未来を描いた物語です。

センセーショナルで独特の世界観が話題を呼び、その後映画やテレビアニメシリーズなど、多くの作品が生まれました。

どの作品にも、ヒトを電脳化したメリットとともに、様々な障害や人々の苦悩、社会の悲哀が描かれています。

ヒトの電脳化には、技術的・医学的な問題もさることながら、倫理的な制約が大きなハードルになることは、容易に想像できます。

②AI導入の手軽さ

しかし「AIワーカー」には、はじめからこの制約がありません。

「AI上司」として、私たちが会話している目の前の物体は、あくまで入出力用の「端末」でしかないでしょう。彼らのアルゴリズムはクラウド上で稼働しています。

ネット空間を自由に行き来できるAI部長にとって、「物理的な実態」は意味を持ちません。本社や支店のAI部長を、クラウド上で一斉に同期させれば、部長は全員「同一人格」として振舞うことが可能です。

このため、
・聖徳太子のように、たくさんのヒトから同時に話を聞く(INPUT)
・離れた場所でも同一人格の知能体として指示を出す(OUTPUT)
など、ヒトには考えられない活躍が期待できます。

しかも、あらゆる言語を操れるとしたら…。まるでどこかの「金色に光るドロイド」と同じ。もちろん「マシン語」にも堪能です。

「いっそのこと、君も電脳化して、頭脳を分割してみるか?」

AI部長が発した衝撃のひと言も、生まれた時からそれが当たり前だった彼にしてみれば、ごく自然な発言かもしれません。

でなければ、ややこしい「ヒト」に対する最大限の皮肉でしょう。

4、電脳化の威力

①経済合理性を前に、物事は前に進む

倫理的な問題はあるにしても、AIワーカーが素晴らしい能力を手にした以上、遅かれ早かれ、ヒトの「電脳化」も現実になるでしょう。

「脳とコンピュータを接続し、AIとの共生を目指す」として、イーロン・マスク氏がNeuralinkを立ち上げ、投資家から多額の資金を集めたのは、既に2017年のこと。

実現はまだ先でしょうが、「倫理的・宗教的な問題」と「経済合理性」との間で、世論が大きく揺れる時代が間もなくやって来ます。

この時「ヒトの倫理観」は大いに試されるでしょう。

ですが、倫理・宗教上の課題が整理される前に、それが投資家に莫大な利潤を生むのであれば、物事は前に進んでしまう。私たちは歴史上知っています。

②電脳化の「光」

ヒトのニューロンとコンピュータを接続したら、どんなことが起こるでしょう?

・自分の記憶を外部メモリに保存できる
・他人の記憶にアクセスできる
・自分の意識がNW空間に直接アクセスできる

ここまではAIワーカーと同じです。この他、ヒトならではの問題に

・自分の知覚情報(視覚、嗅覚、触覚等)が伝達できる
・自分の感情、無意識な考え、妄想が相手にバレる
・夢で見た映像を確認できる

いや、むしろ「さとられ」たくない思いや、他人に見せられない「夢」もあるでしょう。まあ、やましいところがなければ、心配いりませんね。

性善説に立てば、技術革新は可能性に満ちています。

5、どちらの命が優先か?

①「ヒト」が定義できなくなる日

ここで問題です。
Q1:屋上に助けに来た救難ヘリは1機だけ。避難を待つ全員は乗れません。この場合、人間と「AI上司」どちらを優先しますか?

AI上司は、いかにも機械テイストな外観のため、若干の「罪悪感」はあっても、迷わず人間がヘリコプターに乗る(助ける)でしょう。

Q2:同じ状況で、「電脳化した人間」と「していない人間」では、どちらを優先して助けますか?

「どちらも同じ人間、優劣はつけられない」と考えるかもしれません。では、電脳化比率を増やしたらどうでしょう?

電脳と義体が9割で、オリジナルが1割。そもそもこれは人間?
ややこしいことに、その物体には、その人の人格や個性がしっかり残っています。

これまで当たり前だった「ヒト」や「存在」の概念は、電脳化を是としたとたん、一気に曖昧になります。既存の定義は吹き飛ぶでしょう。せっかく大改正した民法も、全面的な見直しが必要ですね!

②電脳化の「影」

・脳自体を直接ハッキングされたり、ウイルス感染のリスクが生じる(思考を乗っ取られる)
・オリジナル脳と電脳比率が逆転した場合、どこまで人間で、どこからAIか、もはや定義できない
・電脳化と義体化の進行が、新たな「種」を誕生させる

SFで描かれてきた世界は、どうやらフィクションではなくなってきました。

話を元に戻しますが、ヒトが「兼務」問題に悩んでいる間に、全く「違う意味」で、抜本的に解決されそうですね。

ヒトの頭に「プラグイン端子」が出来るのは、私たちの子供世代?それとも孫世代から?せめて、良質で「高価な」電脳を買ってあげたいものです。

6、まとめ

・企業の不祥事が後を絶たない。働き方改革の一方、解決すべき問題も山積。この処理を暫定組織に託すことが「兼務」を増やす一因
・兼務の増加は、問題発覚の都度「後追い」で対応せざるを得ない「苦しいピッチング」が続いている裏返し

・AIワーカーにとって「物理的な実態」は意味を持たず、複数の端末が「同一人格」として振る舞うことも可能


・電脳化は、技術・医学的な問題以上に、倫理上の制約が大きな障害

・電脳化事業のハードルは高いが、倫理上未整理でも、「経済合理性」と投資家への莫大なリターンが、事業を前に進める

・これまで当たり前だった「ヒト」や「存在」の概念は、電脳化を「是」としたとたん曖昧になり、既存の定義は吹き飛ぶ

・電脳化と義体化の進行は、新たな「種」を誕生させる

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