3章 会議の知恵

3章③会議の「知恵1」/成功の裏メニュー「共鳴の知恵」

1、働き方改革が「消極分担型」を増やす

会議テクニックについて見てきましたが、ここからは会議参加者の「本音」に迫ります。

手の内を見せない参加者も、終了間際に一気に本音があらわれる!会議にはよくあるケースです。どうしてでしょう?

実は、参加者がはじめから「最後の5分勝負」にかけているからです。結論をまとめる5分とは、参加者からみれば「タスク分担」の時間。今決めた課題解決や目標達成に向け、今後のアクションを部署ごとにアサインする「タスク分担ゲーム」がはじまります。

気がかりなのは、この時間をスマートに乗り切れるかどうかでしょう。手間のかかるタスクがアサイン(assign)されれば、スタッフの負荷は更に増加します。

<P1>

じぇーむす
じぇーむす
仕事振られたら、
どうしても不公平感が残る!
りー課長
りー課長
分担の仕方も大事だね。
みんなの理解が得られるような
合理性が求められる

今は、昔気質に「大事な仕事は徹夜も厭わず俺がやる!」という時代ではありません。

「働き方改革」が定着する現在。「残業時間」や「人件費」の増加は、時代に逆行するパラメータとして、部署ごとに厳しく月次管理されています。「稼働(働く時間)は少なく、成果は多く」。この風潮はネガティブにも働きます。

つまり、手にする「成果」はみな同じなのに、自分の部署だけ大変な仕事が分担(アサイン)されるのは「コスパが悪く不公平なこと」と受け止めてしまうのです。

このため会議の雰囲気は「分担型」に影響されます。タスク分担にどんな態度で臨む人達か、そのメンバー構成によって変わるのです。

<P2>

2、積極分担型と消極分担型

タスクの分担タイプは、大きく2つに分かれます。

(1)積極分担型

参加者が自主的に手を挙げ、積極的にタスク持ち帰るタイプの会議

想定事例:
新規PJ立ち上げに伴い、各部署から志の高いスタッフが招集されたチーム内会議。今後の事業を担うため社内での注目度も高い。

仕事を厭わない参加により 「私はこれ!」「僕はこれ!」と、タスク分担にも積極的に手が挙がります。
【タスク例】
・事業ドメインの分析と成功事例の収集
・法令やコンプライアンスのチェック
・行政への申請手順と必要書類の準備
・各種契約書類のひな形作成
・協力会社群への説明など

モレや重複のチェック、個人ワークの期限、事前共有の目安などもスピーディーに決められていきます。

ファシリテーターの注意点は、参加者の熱量が多いため、議論が白熱し脇道に逸れないようハンドリングしてあげることです。

ろばーと
ろばーと
いいね!
仕事を楽しんでる証拠だ

<P3>

(2)消極分担型

他部署にタスクを「振ろう」とする参加者が集まる会議。発言には終始慎重な姿勢を崩さない。

想定事例:
某支店で発生した重大なインシデントに端を発する会議。同様の事象がないか全社で総点検。また、原因究明、再演防止、顧客や行政への説明等を分担し、対応策を議論する。

参加者は、それぞれ稼働がひっ迫し、これ以上負担を増やしたくありません。総論は賛成。一方で「主幹はウチじゃあない」と主張するネタは用意しています。

じぇーむす
じぇーむす
総論賛成だけど
仕事は振らないでほしい…

責任や仕事を他部署に振ることが目的のため、発言には慎重で、なかなか手の内は見せません。“言い出しっぺ”に仕事が降ってくるのを避けるためです。

総論が決まっても、肝心の実行部隊が決まりません。ファシリテーターは、この事態をはじめから把握しておき、強力なリーダーシップを利用するなり、説得できそうな合理的な理由を考えるなど、消極メンバーにタスク分担していく「知恵」が求められます。

ろばーと
ろばーと
いろんな仕事抱えてて
みんな忙しいからね
こうなるのも無理はない…

<P4>

3、会議成功の裏メニュー「共鳴の知恵」


分担型を切り口に、会議は大きく分けられます。ファシリテーターがはじめにすべきは、この会議が「どちら寄り」なのか押さえておくことです。対応姿勢や注力ポイントも大きく変わります。

また、会議の参加者が「議題」以上に「気掛かりな点」も、探っておくと有効です。

【 参加者が「気掛かり」な本音

① この会議は「前向き」か「後向き」か?
② 社内から「期待された」会議か「後始末」の会議か?
③ 加点法か減点法か?(担当部署にとって評価の得点源か?)
④ 会議後の作業まで考慮し、コスパが「良い」のか「悪い」のか?

参加者の「思い」や「本音」がどこにあるのか、あらかじめ見極めておく。これこそが(会議テクニックを振りかざすより)有効な「裏メニュー」です。

<P5>

本音の見極めには「相手と共鳴する知恵」が威力を発揮します。

【相手と共鳴する知恵】

・参加者が気掛かりな本音を「武器」として効果的に使う
・相手と同じ目線、立ち位置で話をする
・相手の話に共感し、回り道でもまずは受け止める
・その上で「自分はこうしたい」と、思いを伝える

・本音を引き出すには、ある程度「手の内」を明かし相手の「懐」に飛び込む
・相手を強引に「引き寄せる」だけでなく、自分も相手の思いに「寄り添う」

ファシリテーター(会議の進行役)は、準備段階から「キーマン」と腹を割って話したり、参加メンバーと共鳴しながら、思いや本音を理解していく。遠回りなようですが、相手との距離はぐっと縮まります。

「こいつは分かってる」と仲間意識が芽生えればと、若手だろうと部署が違おうと「本音」を踏まえた議論が可能です。

じぇーむす
じぇーむす
「こいつ分かってるな」ってなったら
やっとバリアがなくなるよね。
りー課長
りー課長
ビジネスで本音が言えるのは
仲間と思える人だけだからね

一方で、このステップを踏まえず、表面的な「会議テクニック」だけ振りかざしても、相手には響きません。参加者の「思い」とズレたままでは、会議は最後までかみ合うことはないでしょう。

そればかりか、無理やり決めたタスク分担は、メンバーの感情にしこりを残し、後の仕事に影響してしまいます。

<P6>

前【3章②】へ次【3章④】へ