3章 会議の知恵

3章① 会議を制する者がビジネスを制す prologue

1、「行儀がいい会議」が増えている!

会議には、ヒトの「二面性」に翻弄されてしまう構造的な特徴があります。表向き、淡々と進んでいるように見える会議でも、実態はヒトの「思い」が交錯し、激しい駆け引きが行われていることも少なくありません。また、組織独自の「お作法」や「暗黙のルール」等も存在します。

一方で「働き方改革」が浸透した現在、効率化と時短の波は、会議に副次的な影響をもたらしています。いわゆる「行儀がいい会議」の増加です。

会議は「参加人数分の時間」を消費して行われるもの。貴重なリソースに見合った効果を短時間で導くため、会議の①「目的」②「到達点」③「使える時間」を参加者全員が共有し、脱線を防ぐことが求められます。

無駄を減らそうとする時短意識も浸透してきました。以前に比べ、会議の質は確実にグレードアップしています。

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しかし、同時にそれは、皮肉にも「本質的な議論」を避けて通ることにもつながっています。

特に、会議規模が大きくなるとこの傾向は顕著です。ファシリテーターが小手先の「会議テクニック」で表面的に議事を進行すれば、会議参加者も表面的に「お付き合い」を演じます。最後まで大したハレーションもなく「予定調和的な結論」が導かれる。効率化と時短意識が、本質的な議論に踏み込まない「役者」を増やしているのが実態です。

現場の実態を知る参加者の「本音」と「建て前」が一層乖離し、本来解決すべき「真の問題」に気づかぬまま、組織を揺るがす事態に発展する原因にもなっています。
→組織を揺るがす!会議の「2大リスク」

「役者たち」が多く集まる会議で、参加者の本音を見極め、本質的な議論に踏み込むのであれば、いくつもの「知恵」とプロセスが必要になってきます。

じぇーむす
じぇーむす
二面性ってどういうこと?
りー課長
りー課長
簡単に言えば、
①表向きの議論と
②参加者の本音
というところかな

また、会議中だけでなく、開催前の段取りから会議後のアクションまで、一連のプロセスをトータルで考える必要もあります。

この章では、会議を効率良く進める知識(テクニック)だけでなく、ビジネスのワンシーンとして会議をとらえ、本質的な議論を巻き起こす「知恵」にフォーカスします。ビジネス全体を向上させる「会議の知恵」です。

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2、会議の全体像を俯瞰する

(1)会議の全体像

会議には、規模により次のような特徴があります。

<大規模な会議>
・意思決定を伴うことが多く、テーマが大きい
・各論を全て消化する時間は無い
・会議前の「根回し」が活発
・会議前に大方の路線が決まっている
・会議中は「全体像」と「各論」を上手く織り交ぜるバランス感が必要
・多忙なVIPも参加するため、議題が過密に詰め込まれることが多い
・開催自体が目的である会議も多い(手段の目的化)

<小規模な会議・打合せ>
・テーマが具体的で仕事に直結する
・短期決戦型。短時間で成果を導く必要に迫られる
・大方の打合せ目的は、次のいずれかに帰結される
誰がどの仕事を担当するか (積極分担型)
誰にどの仕事を担当させるか(消極分担型)
③ インシデントやクレームの責任の所在

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全体像は、図のように2軸で表わせます。
小規模会議のテーマはより具体的ですが、その分、個人の仕事に直結してきます。逆に規模が大きくなると、形式的な会議が増え「二面性」が際立つ点が特徴的でしょう。

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(2)ファシリテーターに求められる「会議の知恵」

会議には、①表向きの議論と、②実態を踏まえた参加者の本音、という2つの側面が存在します。本来は、表も裏もなく「集まって物事を決める」シンプルな場のハズですが、複雑で個性豊かな「ヒト」が関わるため、様々な現象が起こるのです。

時には予想外の「化学反応」を引き起こし、思いがけずビジネスを前進させることにもつながります。一方で「二面性」が過度に進むと、組織を揺るがす大きな事態にも発展しかねません。

このため、ファシリテーターに求められるのは、

① 会議の規模やタイプごとの特徴を理解し
② 参加者の「クセ」や「二面性」を把握した上で
③ 参加者と「共鳴」しながらの「本音」を引き出し
参加者の「自主性」と「意欲」を刺激することで
⑤ 会議を活性化し、本質的な議論に巻き込んでいく

という、かなりハイスペックな「知恵」が必要になってきます。

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会議には、多くのヒトや部署が関係します。利害が対立する中、関係者をどう取りまわすのか。会議前から、ファシリテーターの「立ち居振る舞い」や「仕事への姿勢」は見られています。対応次第ではキャリアにも影響するでしょう。逆に言えば、大きなビジネスチャンスでもあります。

じぇーむす
じぇーむす
会議にはいろんな人が参加するから
結構目立つよね!
ろばーと
ろばーと
みんな口には出さなくても、
ちゃんと見てるからね。

ヒトの思いが交錯し、二面性があり、暗黙のルールまで存在する。なかなかのハードルで一筋縄にはいかない分、会議を制する者がビジネスを制するのです。

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