1、AIによる代表者会議
ヒトの特性を浮き彫りにするため、「AIが集まる会議」をシミュレーション上想定し、「ヒトの会議」と比較します。
ビジネスは収益向上と効率化を追求します。ビジネスライクに見れば、「ヒトの会議」は無駄や矛盾が多く「AI会議」に軍配があがりそうですが、果たしてどうでしょうか。
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時は20XX年。
毎月開催する「全国代表者会議」の模様です。会議に参加する代表者は、今やどの支店も「AI」が選ばれるようになりました。「ヒト」は議論に参加せず、「陪席者」として後方に控えるのみです。
このため「AI」どうしがわざわざ一堂に会して議論する「パラドックスな光景」が生まれました。本末転倒な設定ですが、実際行われたら面白そうです。
逆に「ヒトが集まる会議」の非効率な有様を、私たちに見せつける結果になっています。
AI会議では、次の手順で物事が決まっていきます。
【AI会議の決定プロセス】
① 案件に関係するファクターを全て洗い出し、デジタルに因数分解
② 分解した要素ごとに、重要度・緊急度などのパラメータを数値化
③ 基準に従い、全ての数値を論理的に評価しYes/Noを判断
実は、このプロセスでさえ、アルゴリズムで一瞬で処理されるため、本来「会議の体裁」にはなりません。
この会議では、AIがヒトに合わせレベルを落としています。会議にヒトが混ざっても「ついてこれる」よう、陪席者が理解できるように、AI達があえてゆっくり丁寧に議論しているの設定です。
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2、AIには理解できない!
/「ヒトの会議」の無駄と矛盾
(1)ヒトの会議の無駄と矛盾
こうして実現した「AI会議」と比べると、私たち「ヒト」の会議がどれだけ無駄や矛盾に満ちているか、シンプルに思い知らされます。いや逆に「AI」達から見ると、「ヒトの会議」が信じられないかもしれません!
AIには信じられない【「ヒトの会議」の無駄と矛盾】
・感情的な発言(非論理的な発言)
・態度を表明しない、どっちつかずの発言
・脱線、議論の飛躍、話の蒸し返し
・論点のズレた主張と、それを指摘しない参加メンバー
・単なるフラストレーション解消(不平・不満・愚痴・非難)
・「含み」を持たせた言い回し
・「本音」と異なる発言
・「表舞台」と別に行う裏での駆け引き
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こうした非論理的で無駄な行動は、AI会議では行われる余地もありません。
一方で、ヒトであれば表立って議論しない「暗黙な情報」も、AIは包み隠さず、容赦なく表舞台で議論します。この様子を私たちが見たら、居たたまれない感情に襲われることでしょう。例えば…
① 支店ごとの評価や成長力(支店の存続可能性や廃止時期も含む)
② 社員ごとの能力や成長力(今後のキャリアパスや「使える・使えない」等)
③ 顧客ごとの信用情報や成長予測(我社にとって「おいしい・おいしくない」等)
確かにきつい…
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(2)会議に「ヒト」が参加しなくなった理由
AI達は、これらの情報もすべて明示した上で、論理的かつデジタルに物事を判断していきます。少なくとも、論理的に「ヒト」がつけ入る隙などありません!
会議にヒトが参加しなくなったのには、この「居たたまれない感」に加え、いくつか理由があります。
【会議に「ヒト」が参加しなくなった訳】
・ヒトは、知識量・情報量でAIにかなわない
・ヒトは、ロジックでAIに太刀打ちできない(ヒトの発言に含まれる論理矛盾を、すぐにAIに突かれてしまう)
・ヒトがもつ遠慮・配慮・暗黙の了解などの感情や作法が通用しない
・ヒトが包み隠したい情報も正面から議論されるため、メンタルをやられてしまう
AIに論破されそうだな!
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3、ビジネスライク、その先はAIライク。
研修で「会議テクニック」を教えるのは、ヒトの能力をビジネスライクにシフトさせ、事業の底上げと効率化に資するためです。つまり、会議に割くリソース(時間や人件費等のコスト)を最小化し、得られる成果の最大化を目的としています。
このように現代のビジネスは、収益向上と効率化(コスト削減)を追求し、持続可能な事業運営を前提としています。そして、これを命題とする限り、ヒトが「ビジネスライク」な能力を追求していく先には、皮肉にも「デジタルライク」→「AIライク」な世界が広がることになるのです。
「ヒトがAIにリプレイスされた」パラドックスな光景は、現代ビジネスの前提条件から導かれる必然でもあります。
「ヒト」のように本音と建前を使い分け、発言に「含み」や「余地」を残したり、私情を挟むこともなく、「AI」のように物事をデジタルに評価し、容赦なく判断する方がビジネスの目指すところと合致します。
この観点でいえば、ヒト特有の複雑な感情や「思い」の類は、非効率で無駄なもの、と安易な評価につながりかねません。
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どんなこと?
例えば、①会議目的をみんなで共有したり
②ホワイトボードを上手に活用したり
③準備や段取りに関する工夫などだね!
ちなみに、AIが導く結論は、アルゴリズムをいじらない限り、与条件が同じならいつも同じゴールに到達します。ヒトのように(無駄や矛盾が多い反面)、急に「創造力」が発揮されたり、予想外の化学反応が起こる余地はありません。
会議の代表者がAIに占拠された例でもわかるとおり、この先を見据えれば、私たち「ヒト」は、早く戦うフィールドをシフトしなくてはいけません。「知識」から「知恵」へ。そしてAIが及ばない「創造力」を発揮していく時に来ています。
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