1章 報連相の知恵

1章④ 報連相の「知恵2」/仕分け/自責/参謀/仁義の知恵

(1) 仕分けの知恵

案件の緊急性や重要度、与える影響の大きさを素早く判断し、検討にかける時間と人数をはじき出す。仕事を「仕分ける知恵」は、全ての仕事の「入り口」で必要になる能力です。

担当者は複数の案件を抱え、多忙を極めています。時間という「貴重なリソース」を、どこにどれだけ振り向けるのか。素早く創造的にはじき出すには、ビジネスパーソンとしてブレない判断軸+経験値+センスが試されます。

研修では「プライオリティ付け」を多用しますが、どうしても「重要な仕事を優先する」というキレイな側面ばかり強調します。

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ところが実際は「どの仕事に手間を掛けず」「どの仕事を切り捨てるのか」常に悩ましい判断を迫られる。だからこそ、知恵が必要になるのです。

ビジネスでは、切り捨てる仕事があるから、時間をかける仕事も生まれます。「仕分けの知恵」を働かせ、案件の性格を見極め、時には損得勘定しながら「拾う」ために堂々と「捨てる」判断もすることです。ポジティブに言い換えれば「メリハリの効いた仕事」になりますね。

スティービー
スティービー
「案件」によって判断?
報告先が「どんな人物」か
「人」でそろばんはじくのでは?
ジェームス
ジェームス
ずいぶんと「したたか」な知恵やんか
報連相の知恵03図3知恵ベース思考_項目解説

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(2)+(3) 自責切替の知恵/参謀の知恵

【中級編】自責切替の知恵/ランクアップの知恵(1)

今回の報告モデルケースは、「仕事のトリガー」が「上司の指示」という設定がひっかけポイントです。

忙しいとつい、課長から「言われたこと」を「言われたまま」に部長に報告する、単なるメッセンジャー(今回は課長→部長へのメッセンジャー)で仕事を済ませてしまいがちです。

一方で、最早組の担当者は、上司から報告指示を受けた時「そもそも今、この報告は必要なのか?」自分でもその是非を一回考えています。
→ 表(2)そもそも報告が必要か?/なぜ報告するのか?
→ 表(3)今は報告すべきタイミングか?

これは、「他責の仕事」→「自責の仕事」へ思考回路を切り替えている証拠です。

ジェームス
ジェームス
「他責」から「自責」の仕事へ
なんか、かっこいい響きだね!
りー課長
りー課長
実際やろうとすると結構大変なんだ
上司と同じ土俵にたつ覚悟が必要だ!

【他責(上司)の仕事→自責の仕事へ /切替3か条】
①高いアンテナと視野を持ち、上司と同じ土俵で考える
②報告相手や第3者に対し、自分を「主語」にして話す
③報告後のフィードバックやアクションにも、自責で対応する

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「自分の仕事」として考えた結果、上司と違う結論に至ることもあるでしょう。「類似案件をまとめて報告すべき」「報告するまでもない」など。

正しいと思うなら、しっかり主張する事が大切ですが、それには上司の持つ「バックボーン(情報網)」と「思考レベル」に自分を近づける必要があります。

常に覚悟を持ち、「上司と同じ土俵」に立つ習慣があれば、「視座」は上がり「視野」も自然に広がります。

上司や周りも、あなたを「高いステージ」の人財として捉えるでしょう。そのステージと職位にギャップがあれば、程なくあなたのランク(職位)は上がり、ギャップは自然に解消します。

リー課長
リー課長
自分の「職位」と「働き」に
ギャップをつくれ!
ギャップは勝手に解消する
ロバート
ロバート
次の「参謀の知恵」も同じ!
自分を勝手に「ランクアップ」
させておく知恵だね

また、「報告」きっかけで始まった仕事でも、その後に続くフィードバックやフォロー等、自責対応を続けていく必要があります。

もちろん、部長報告の模様は、迅速・正確に(課長へ)フィードバック。また、上司に頼まれて始まった仕事でも、ここからは、誰に情報共有すべきか等、自分で考えていくことが必要です。

始めは大変ですが「自責切替」が習慣化されていると、「仕事の質」「視座」が大きく向上します。3年もすれば、決定的な差がついているでしょう。

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【上級編】参謀の知恵/ランクアップの知恵(2)

更なる上級編「参謀の知恵」をご紹介します。
(企業カルチャーに合わせてご判断ください)

広く他部署や各支店に張り巡らせた「情報ネットワーク」と「高いアンテナ」があってはじめてなせる技です。

【参謀の知恵/例1】
①本件単独での報告はリスキー
②他案件と一緒に「ひとつのストーリー」の中で併せて報告すべき


【参謀の知恵/例2】

①本件は、まず他部署から部長にインプットされるのを待つべき
②その後、他部署報告の模様と部長の反応を踏まえ
③チューニングしてから、部長にあてるべきであること

この次元のアドバイスを課長に耳打ちするのが「担当者」の役目、と心得る強者(つわもの)もいます。

情報網と高いアンテナに加え、上司の「半歩先」を見据えた見識が、「参謀の知恵」のベースになっています。

スティービー
スティービー
「時」は今ではない!
白黒はっきりするまで待たれよ
ジェームス
ジェームス
さっきと同じ。自分を勝手に
「ランクアップ」させて
モノを考えているね

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指揮官は所掌範囲が広く、処理する情報量がたくさんあります。

代わりに情報を収集し、自分が「知恵袋」となってボスが進むべき道を的確に示してあげる。こうした参謀を擁した組織は、盤石に足場を固め、高い成績を上げていきます。

上司が評価されれば、結果的に自分にも成果が帰ってきます。何より、他組織のボスが見逃すハズがありません。

【参謀役を務めるには】
①日頃から信頼できる「情報網」を構築する
②上司と渡り合える、高い視座と広い視野でモノ考える
③上司の「半歩先」を見据える

前出の通り、自分の職位を勝手に「ランクアップ」させ、その体(てい)で仕事をし続けると、いつの間にかランクが上がり、高い職位は現実のものに。要は、自分の仕事の最低ラインを「どのランクに設定しているか?」ということです。

このラインを常に高く設定しているのが、キャリアアップを重ねる「最早組」に見られる大きな特徴です。

リー課長
リー課長
繰り返す!
自分の「職位」と「働き」に
ギャップをつくれ!
ギャップは勝手に解消する
ジェームス
ジェームス
今回は、更に上のステージ!
上司の「半歩先」を行く必要があるね

逆に「判断は上司の仕事」と関知しないのは、自身を現在の位置に閉じ込めてしまいます。

報連相の知恵03図3知恵ベース思考_項目解説

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(4)+(5) 仁義の知恵

伝統的な企業や大きな組織では、現在も(4)(5)の配慮は見逃せません。

役員や本部長など、経営陣に情報をインプットするには、事前に各方面への影響を考慮し、仁義を切っておく必要が出てきます。

【仁義の知恵】
例1)報告後、役員から質問が飛びそうな部署には、あらかじめ報告する旨の仁義を切っておく。必要なら報告資料を事前に共有する


例2)報告により「顔」を潰される可能性がある人には、対策する時間を与える


例3)報告時に、役員から「〇〇は知っているのか?」と指摘がありそうな人を予測し事前に話を通す。必要なら一緒に同行する。

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こうやってあえてテキストにすると
昭和的、非効率と揶揄されそうですが、人と人の間で働く以上、その企業固有のカルチャーを肌で感じ、段取り力(立ち回り力)を身に付けることは、①人を引き寄せ、②協力者を増やし、③結果的に自分のやりたい仕事につながる良いスパイラルを発生させます。

その後の仕事をスムーズに進める上で、最も求められる知恵かもしれません。

スティービー
スティービー
更なる上級編として「ハレーション」の知恵がある
「仁義」を切らず、わざとハレーションを起こしにいく技だ。解説できるレベルを超えてるが…
ジェームス
ジェームス
…黒いな

 

報連相の知恵03図3知恵ベース思考_項目解説

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