【素敵な選択肢】1章「整える」

【素敵な選択肢】1章②ボーっとする

人生には様々な「選択」があり、日常生活のあらゆるシーンが選択の連続です。夢を叶える「素敵な選択肢」。2つ目は、時には「ボーっと過ごす」お話です。

1、素敵な選択肢②「ボーっとする」

(B or A)あなたの選択は?

旅館の夕食は開始時刻が選べます。ところが今回、希望の時間は既にいっぱい。仕方なく1時間遅らせることにしました。

思いがけず、ぽっかり空いた「空白の1時間」。2人とも、部屋で「ボーっと」過ごしています。

その行動は一見同じように見えますが、頭の中は、まるで違っているようです。

【ケース1】時間のとらえ方/選択肢(B or A)

【ケース2】ボーっとしている「頭の中」/選択肢(B or A)

2、無駄な空き時間 vs せっかくの空き時間

「B」の彼は、空き時間が苦手です。

「食事の時間」、「入浴の時間」等、すべてに明確なラベリングが出来ないと落ち着かないため、余白が出来るとすぐに予定を詰め込んでしまいます。

このため、急に「空いてしまった1時間」は、彼にとっては「無駄な時間」。

その背景には、いつもアクティブに動いていたい、というポジティブな理由の他に、「空き時間」を避けて通りたい、何か別の原因がありそうです。

一方で、「A」の彼は、空き時間を気にしません。

予定外の事態にも柔軟に対応できるため、むしろ意図的に余白を残し、成り行きや、思いがけない「ご縁」を楽しむことができます。

このため、急に「空いてしまった1時間」は、彼にとって「せっかくのご縁を楽しむ時間」。

どうして、こんな違いが生まれるのでしょう。

3、負荷が大きい雑念 vs 心地がいい妄想

(1)過去への執着、未来の不安

「豊かな自然に抱かれて、露天風呂でボーっと過ごせば、心も身体もリフレッシュ。日頃の疲れを吹き飛ばそう!」

パンフレットにありがちなフレーズですが、Bの彼には、その意味がまったく理解できません。

仕事の悩みや不安は、真面目に向き合うほど、大きなストレスを伴い、どこへでも追いかけてきます。

温泉に浸かってボーっとすれば、確かに身体の休息にはなるでしょう。一方で、彼の脳には依然として「疲れ」や「緊張」が残っています。

これは、意識的な活動をしていない時間、つまり「空白」が生まれると、彼の頭に「ストレス(負荷)のかかる雑念」が次々と押し寄せてくるのが原因です。

それは、過去の出来事への「怒り」や「悔しさ」だったり、未来に対する「恐れ」や「不安」など様々です。

ただ不思議なことに、楽しんでいるハズの「今」への思いは、登場してきません。

これが無意識にループして襲ってくるため、自覚が無い本人には、雑念を止める術がありません。

負荷のかかる思考パターンに拍車がかかれば、脳は休まるどころか、かえって疲労がたまってしまいます。

Bの彼は、そうなることが経験的にわかっているので、「空白時間」を無意識に避けるようになったのです。

(2)エネルギーを大量消費/デフォルトモードネットワーク

ボーっとしている時、脳が無意識に行う脳内活動を、「DMN(デフォルト・モード・ネットワーク) ※」と呼んでいます。

脳のアイドリングとも言うべきこの活動は、意識的に「何か」をしている時より、これから起こり得る全方位を予測して、これに備えようとするため、むしろ多くのエネルギーを消費する、と言われています。

つまり、Bの彼が肌で感じている逆説的な経験則「ボーっとしているのに頭が疲れる」は、DMNの存在が確認されたことにより、その仕組みが証明されようとしているのです。

※DMN(default mode network)

意識的な活動時の20倍のエネルギーが必要で、脳全体の消費エネルギーの75%を占める(※1)と言われる

DMNには、自己免疫力を高めたり(※1)、ごちゃごちゃした頭の中が整理される(※2)等、ヒトにプラスな働きも報告されている

出典(※1)社団法人認知症高齢者研究所 (※2)「脳を鍛える茂木式マインドフルネス」茂木健一郎著

(3)今を楽しみ、未来にワクワク

一方で「A」の場合も、同じようにボーっとしていますが、彼の頭には「ネガティブな過去」が登場していません。

思いを巡らせているのは、旅先で出会った人や、旅館の佇まいについて。要するに、過去ではなく「今」に意識を向けているのです。

「何を当たり前な!」と思うかもしれませんが、独りで温泉に浸かっていると、自分の意識が「過去」に飛び、ネガティブ回路にハマってしまう人、案外多いのではないでしょうか?

彼が素晴らしいのは、それだけではありません。

1つ目は、物事の「プラス面」に着目し、そこに焦点を当てること。

同じ出来事でも、プラスと見るかマイナスと見るか、人によって分かれます。どう受け止めるか、自分で「選択」しているのです。

ポイントは、マイナス面を無理に「押し返そう」とあらがっていない点。

ポジティブ思考が全体を覆っているため、ネガティブな「マイナス回路」が発動していないのです。

ボーっと過ごしながら、スタッフの「感じの良さ」にほっこりし、旅館の佇まいに「感心」する。彼の脳は、自然と「心地良さ」で満たされています。

2つ目は「未来の可能性」に意識を向けていること。

未来に対し「不安」や「恐れ」を抱くのではなく、むしろ、その可能性にワクワクしているため、ここでも「心地良さ」を感じ、テンションを上げています。

選択の極意は「“心地いい”と感じる方を選ぶ」こと。

第1章2つ目のテーマは「ボーっとする」ことですが、それはあくまで手段であって、「心地いい」と感じることが目的です。

ボーっと過ごしながら、心地良さを感じるためには

  1. 物事のプラス面に着目して「 今 」 を楽しむこと
  2. 可能性にワクワクしながら「未来」を感じること

ネガティブな「雑念」を忘れようと努力するのではなく、ボーっとしながらも、頭の中では「今」を楽しみ「未来」にワクワクすることで、旅の余白を楽しめるようになるのです。

これこそ、旅の醍醐味ですね。

前回、旅の最初に「ほっと」することで、脳に「居心地のいい時間の始まり」を宣言しました。

その後、分刻みで観光地を巡るのもアリですが、スケジュールに「余白」を残し、心地良く「ボーっと」過ごす選択肢も楽しみましょう。