AIとの共存が当たり前になる生活。Society 5.0が始まります。
面白いことに、高度化するAIがもたらす近未来の描かれようは、現在まっぷたつに割れています。「ヒト」がAIを道具として使う「明るい未来像」がある一方、「絶望的な未来像」がメディアを賑わせ、私たちの不安をかきたてています。
ユヴァル・ノア・ハラリ氏は朝日新聞の記事(2019年9月8日)の中で、「真のruler(支配者)はアルゴリズムになる。残された時間は多くない」と主張。私たちの大半は「ユースレスクラス(無用者階級)」になる、と刺激的な表現で警告しました。
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実は、アプローチした専門分野や「ヒトの関与」をどう加味したかにより、両者の切り口は大きく異なります。どちらか一方の選択肢にまだ限定されたわけではありません。
考えるべきはむしろ、世界が複雑化し、個人レベルではもはや「全体像の把握は困難」になったという事実でしょう。
AIと共存する複雑な「Society 5.0 」だからこそ、「ヒト」はこの時代を堂々と楽しみ、堂々と仕事していきたい。「ヒトの知恵」を集めた「知恵ブログ」を作っていこうと考えたのは、このためです。
Society 1.0 は狩猟社会
Society 2.0 は農耕社会
4.0 は情報社会だね
始めはビジネス編。3年で結果を出すために最早組が使っている仕事の「知恵」に迫ります。
ヒトの武器は知識から知恵に
シフトしよう!がテーマです
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目次
1、堂々と仕事する人/prologue
その人は、いつも堂々としていました。
その人の立ち居振る舞い、表情、醸し出す雰囲気に感じる大きな信頼感や安心感。
その人との会話は、いつも高揚感に満ちています。
長い間仕事をしていると、素敵な人に出会います。
こんな時、出会えた事にまず感謝。
すると、仕事が少し楽しくなり、よりポジティブに考えられるようになるから不思議です。
安心できる人っているよね…
見たことがない。
なんだか行けそうな気がする!
威風堂々たる「ヒト」の魅力は、どこからくるのでしょう。
幅広い教養、深い洞察力、人間心理への共感力。
魅力のルーツは様々ですが、一番の源泉は彼らの「知恵」にあります。
感覚を研ぎ澄まし「ヒト」が生きるために身に着けた「知恵」を使って堂々と仕事する。
その魅力が「ヒト」を惹きつけるのです。
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2、「知恵を使うクセ」を身につけた者が勝つ世界
今、私たち「ヒト」が自分たちに突き付けている課題は「知識から知恵への転換」です。
今起きていることは、すべて「ヒト」がやってきたことが招いた結果です。
テクノロジーの急速な進展は、経済活動や労働環境、軍事バランス、地球環境に至るまで、多くの分野で変動を引き起こし、人々の不安を助長しています。
ですが、そのテクノロジーもまたヒトが進展させたのです。
ヒトは表と裏の顔を持ち、一筋縄にはいかない面倒な側面を持っています。
しかし同時にそれは、複雑極まりない世の中を力強く生き抜くための、不思議な「知恵」でもあります。集団の「知恵」は、時に素晴らしいパワーを発揮してきました。
一方で、ヒトが持つ「知識」はどうでしょう。
コンピュータは、膨大で正確な情報を記憶する作業を得意とします。残念ながら現在、個人が持つ「知識」は、量・質ともにAIにかなわない時代になりました。
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ここでいう知識とは、最近まで「形式知」のことを指していました。
ところが、深層学習AIが、ヒトの十八番(おはこ)であったハズの「暗黙知」もキャプチャーし始めたのです。
わかりやすい例は、スマートフォンに実装された「顔認証技術」です。
ストックされた膨大な写真から、家族や友達の顔を一瞬で見分け、ネームタグを付けてくる機能には「AIは自我を持ったのか?」と錯覚を起こすほどです。アルゴリズムは秀逸で、処理能力も実用に耐える精度まで向上してきました。
ちゃんと同一人物だってわかっちゃうよね!
聞かれても上手く説明できないだろ?
それが暗黙知なんだ!
今後ヒトのアイデンティティは、ますます曖昧になるでしょう。「パラダイムカタストロフィ」つまり、築き上げた「強み」や「経験知」が、一瞬で「弱み」に変わる事態が起こります。
一方で、ヒトが持つ素晴らしい「知恵」は、その価値を急速に高めていきます。ここから先の社会、「知恵」はヒトが「種としての尊厳」を保つ最後の砦となると考えています。
残念ながら、今は反対の方へ反対の方へ、集団で向かっている気がしてなりません。
これから「知恵を使うクセ」を「身につけた者勝ち」の世界がやってきます。
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3、ミヒャエル・エンデの洞察力と「Society 5.0」
今の状況は、ミヒャエル・エンデの作品「モモ」にそっくりです。
懐かしい児童文学ですが、覚えているでしょうか?
時間貯蓄銀行からきた「灰色の男たち」に、街のみんなが「自分の時間」を盗られていくお話です。
恐ろしいのは、少しづつ、確実に状況が変化(悪化)しているにも関わらず、
変わっていく当人達には、それが自覚できないことです。こうなると行く道は明らか。
問題に気づいた「モモ」とその仲間たちが、いくら声を上げても誰も聞く耳を持ちません。
エンデの作品は、 Society 3.0(工業化社会)が急速に進展し、時間の効率化こそ美徳とされた時代のお話です。みんな仕事に忙しく、効率化とコストカット優先の中、生活を楽しむ心の余裕を失っていきました。
1.0 は狩猟社会
2.0 は農耕社会
4.0 は情報社会だったね!
今、 私たちはSociety 5.0を迎えようとしています。 令和元年(2019年)版の総務省「情報通信白書」によれば、5.0の社会とは「サイバー空間と現実世界を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」と紹介されています。 なかなか長いフレーズですが、描かれているのは素敵な未来です。
問題があるとすれば、「人間中心の社会」の「人間」が、誰を指しているかという点でしょう。解釈次第で、未来社会の映像は大きく変わっていくことになります。
中心かもしれんってことね!
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4、Society 5.0 を「知恵」を使って堂々と
AIにお株を奪われないよう、あわててヒトの得意領域を探る議論が、最近活発になっています。ヒトにできて、AIにできないことは何か。
逆説的でおもしろいのは、
・AI研究が、ヒトの脳(神経科学)や知性(認知科学)の解明に貢献している
・「AIにできない領域」が、そのまま「ヒトが能力を発揮すべき領域」へとシフトしつつある
という事実です。 いずれにしてもAIがトリガーとなり、ヒトの存在意義が見直されているのです。
「知識から知恵への転換」が必要なった背景には、次のような事情があります。
・知識量での勝負は、ヒトが戦うフィールドでなくなっていく
(もはやAIにかなわない→AIに任せる領域)
・世界が複雑化し、個別の詳細情報の価値は相対的に低下していく
・環境の激変が「強み」だった経験知(知識)をむしろ「弱み」に変える
だけで使うのはもったいない!
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一方でヒトには、新たな状況にきちんと対応できる「知恵」が備わっており、環境が変わってもちゃんと行動していけるよう出来ています。
そのためにも、私たちは日頃から「知恵」を使う準備(※)をして、新たに出現する社会の「仕組み」と「本質」を大きく掴んでいくことが必要です。
AIとの共存が当たり前になる社会「Society 5.0 」を、これからは「知恵」を使って堂々と楽しみ、堂々と仕事する。これがこの記事の目的です。
※「知恵」を使う準備 ~6つのステップ~
日常的に膨大な情報にさらされると、無意識のうちに「脳」が占領され、自分の軸が無くなっていく。自分を取り戻し「知恵」を働かせるための6つのステップ
1、select 情報を取捨選択する
2、suspect 情報を疑う
3、judge 自分の判断軸を持つ
4、find 意味を見出す
5、communicate 人に「伝える」
6、& thank そして感謝する
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5、雇用市場は「ヒト」が左右する
この先の雇用市場はどうなっていくのでしょう。
ネガティブな情報ばかり飛び交う現在、どの仕事がAIにリプレイスされるのか、
自分の職場は大丈夫なのか、心穏やかではありません。
ユヴァル・ノア・ハラリ氏は朝日新聞の記事(2019年9月8日)の中で、「真のruler(支配者)はアルゴリズムになる。残された時間は多くない」と主張。大半は「ユースレスクラス(無用者階級)」になる、と刺激的な表現で警告しています。
面白いことに、AIがもたらす未来の描きようは、現在大きく2つに分かれています。
【人文・社会科学・歴史学などの専門家】
AIの進化がもたらす「ネガティブ」な側面をクローズアップ
【研究に直接携わるAI専門家】
自意識を持たないAIの限界と、ヒトがAIを道具として使いこなす明るい未来像をクローズアップ
この現象は、AIやSociety 5.0 の世界が、個人レベルではもはや「全体像の把握は困難」になったことを意味しています。複雑で大規模な事象を予測しようとする時、切り口が違えば、その先の未来像も大きく変わって見えてしまうのです。
両者の一番の違いは、AIの普及と発展に「ヒトの関与」をパラメータとしてどう加味しているか、という点でしょう。
始めに書いたとおり、今起きていることは全て「ヒト」が行ってきた事が招いた結果です。そして、この先の社会もやはり「ヒト」が左右します。「AI」ではありません。
武器にAIを搭載するかどうか、進化の方向は「ヒト」が決めるのです。
ビジネスの世界も同じ。
この先の雇用市場を左右するのも、仕掛ける連中も「ヒト」です。
私たちビジネスパーソンが生き残りを模索し、自己改革していくヒントがここにあります。
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