序章 知恵の扉

「回答力」は知恵で決まる②/知識ベース思考と知恵ベース思考【図解編】

前章【回答力① 例題編】に続き、知識と知恵の関係を図解しながら紐解きます。

後半は、高度化するAI勢力の拡大を睨み、ヒトは「美意識」と「尊厳」を保てるドメインをどこに求めるべきか、シュールな世界で「住み分け」を考えます。

1「知識」と「知恵」を大胆図解!

1)知識と知恵の相関図

「知識と知恵」相関図_簡略版

これまで脳にインプットした「情報」は、体系化され「知識」として蓄積されます。この知識を使って、相手にとって「意味のある」アウトプットに仕立てるのが「知恵」の役割です。

上の相関図は、①情報を脳にインプットし、②知識・知恵の思考回路で処理した後、③アウトプットする様子を模式的に示しています。

「知識」とは「情報を体系化したもの」
  (情報を“意味のまとまり”ごとに体系化したもの)

「知恵」とは「知識を使い意味を生み出す能力」
  (情報の本質を見抜き、知識を使って意味を生み出す能力)

以上を踏まえ補足すると、相関図は次のように表わせます。

「知識と知恵」相関図「知識と知恵」相関図_解説版

2)スタッフの回答 /知識ベース思考

ワープロ研修の場面設定【回答力①例題編】より
Q. 受講者の質問:練習問題にある「□□」とは何ですか?
A1.スタッフ回答:スペースです!
A2.講 師の回答:編集記号です!


サポートスタッフは、①「聞こえた情報」をそのまま「脳」にインプット、②「自分の知識」基準で答えを導き、③そのままアウトプットして受講者に伝えています。

つまり「知恵」を経由せず、反射的に「知識」のみで回答する経路です。

3)講師の回答 /知恵ベース思考


これに対し講師は、インプットした「情報」とこれまで蓄積した「知識」を、「知恵」ベースの思考回路まで引き上げています。

「この人は、どんな事に困っているんだろう?」これまでの背景や状況をもとに、相手の「困りごと」を予想して考えた結果、質問の「本質」を見抜き、相手にとって「意味のある回答」をアウトプット出来たのです。

2「地球か、地球以外か。」
/「AIか、AI以外か。」

1)AIに出来る事は有限、ヒトに出来る事は無限。

唐突ですが「地球と宇宙の関係を示しなさい!」と言われたら、どうしますか?

いざ描こうとすると、地球は明確に描けても、宇宙の絵姿が表現出来ないことに気がつきます。無限に広がる宇宙には境界が無く、領域が示せないからです。

このため、互いの関係はさしずめ「地球か、地球以外か。」

スティービー
スティービー
「地球か、地球以外か。」

同じことが「AIに出来る事」と「ヒトに出来る事」にも成立します。

「AIに出来る事」は(現段階では)有限で定義可能ですが、「ヒトに出来る事」は定義できません。深淵なヒトの脳は(神経科学が解明できない)無限のパワーを秘めているからです。

このため、互いの関係はやはり「AIに出来る事か、それ以外か。」

ジェームス
ジェームス
「AIか、AI以外か。」

2)知識は有限、知恵は無限の可能性。


長い前振りでしたが、知識と知恵の関係も同じです。

「知識(情報を体系化したもの)」の領域は定義できても、「知恵」は無限の可能性を秘めています。境界が描けず領域は定義できません。

2つの領域図(ベン図)を比べると、「AIには出来ない領域」⇒「ヒトに出来る領域」⇒「ヒトが持つ知恵の能力」⇒「無限!」という図式が浮かんできます。

脳に秘められた「知恵」は宇宙と同じ
目に見えないけど、可能性は無限だ!
ジェームス
ジェームス
「知恵」が定義しずらいのは
そういうことか!

3、AI勢力拡大中!/ヒトのドメインは?

高度化するAIに出来る領域が、確実に広がっています。

序章①知恵を身につけた者が勝つ世界/2節】で紹介した「深層学習AI」は、ヒトの十八番(おはこ)であった「暗黙知」をキャプチャーし始めました。

顔認証技術は「暗黙知」の代表例。実は「形式知化」した膨大なアルゴリズムを、圧倒的な演算能力で処理しています。2020年代は、私たちの身近に溶け込むAIに「驚かない」「気付かない」「気にしない」時代かもしれません。


いま私たちには「知識から知恵への転換」が急務です!

AIに出来る領域:形式知も暗黙知も含め「知識」領域をカバー

AIに出来ない領域:ヒトが持つ「知恵」を生かした思考領域

AIはヒトの「知識」領域をカバーするべく能力を拡大しています。裏を返せば、ヒトが持つ素晴らしい「知恵」は、ますますその価値を高めていくのです。

「知恵」はヒトが「種としての尊厳」を保つ最後の砦。これから「知恵を身につけた者が勝つ世界」がやってきます。
前の記事へ